社説[生活保護法改正]申請萎縮が懸念される

  • 2013.05.20 Monday
  • 13:07
 生活保護制度へ厳しい目が向けられる中、政府は不正受給対策を強化した「生活保護法改正案」と、受給手前の生活困窮者に向けた「自立支援法案」を閣議決定した。

 自立を後押ししながら、受給者への厳格な対応も打ち出す内容で、成立すれば1950年の制度施行後、初めての本格改正となる。 

 決定した生活保護法改正案では、不正受給の罰金を現行の「30万円以下」から「100万円以下」に引き上げ、返還金には4割まで加算できるペナルティーをつける。

 保護申請時には、本人の資産や収入を書き込んだ書類の提出を求め、申請者を扶養できないという親族に対しては、理由の報告も要求する。

 背景にあるのは、人気タレントの母親が保護を受けていたことをきっかけに相次いだ「不正受給」報道や、生活保護バッシングである。

 もちろん不正受給へは厳正に対処すべきだ。だからといって申請手続きまでも厳格化するのは、問題が違う。

 そもそも住む所もない路上生活者や着の身着のまま逃げてきたDV被害者が、預金通帳や給与明細、年金手帳といった収入が証明できるものを持っているだろうか。

 北九州市で生活保護の申請を拒まれた男性が孤独死し問題になった時は、家族の扶養義務を重視しすぎた対応が指摘された。死亡した男性は妻と離婚しており、子どもとの関係も複雑だったからだ。

 引き締め策が保護のハードルを高め、必要な申請をためらう事態を招かないか、心配される。

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 法案のもう一つの柱は、自立のための施策の強化だ。

 生活保護法改正案では、就労を促すため、働いて得た収入の一部を積み立て、保護から脱却した後に支給する「就労自立給付金」をつくる。

 自立支援法案では、生活保護に至らないよう、仕事と住居を失った人に家賃を補助する制度を恒久化する。

 受給者の就労インセンティブを高め、保護を受ける一歩手前の人たちに「安全網」を設けるのは、必要な対策といえる。

 ただ自治体で先行する就労支援が、思ったような成果を挙げていないのが気になる。いったん就職しても長続きしないという。

 対象となる人たちは、職業訓練を受ける機会に恵まれず、社会的にも孤立してきたケースが多い。仕事に就いた後も寄り添う「伴走型」の支援でなければ、有効に機能しないということだろう。

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 生活保護を受けている人は1月時点で約215万人。過去最多を更新し続けている。

 貧困の広がりとは裏腹に、受給者に対するまなざしは厳しさを増している。

 そもそも生活保護は、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を権利として具体化したものである。生活保護の見直しで一番重要なのは、誤解や偏見のないよう制度の趣旨を社会全体で共有することではないか。

 法改正に求められているのは、不正受給対策と同時に、本当に困っている人がいつでも安心して使えるよう安全網を再構築することだ。

沖縄タイムス 2013/5/19
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